【令和7年度アーカイブズ研修Ⅱ特集】
国立公文書館が実施した「電子公文書の管理・保存・利用」に係るアンケート結果報告

国立公文書館
公文書専門官 島林孝樹[1]

はじめに
  国立公文書館(以下「当館」という。)では、「令和7年度アーカイブズ研修Ⅱ」を開催するにあたり、全国の公文書館等に対して、電子的方式で作成された公文書等(以下「電子公文書等」という。)に係るアンケート調査を行い、その結果を受講者に共有しました。
  今回実施したアンケートの概要は以下のとおりです。
〇対象機関:160機関(国立公文書館等、地方自治体立公文書館、公文書管理条例制定自治体 等)
〇回答機関:68機関(回答率42.5%)
〇実施期間:令和7年11月1日(土)~12月19日(金)
○質問項目:
    A.電子公文書に係る基本的事項について
    B.電子公文書等の移管・保存・利用(閲覧)について
    C.「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック」(令和7年4月)の活用について
    D.その他

  同様のアンケートは、「令和5年度アーカイブズ研修Ⅱ」実施の際にも行いましたが、今回のアンケートでは、各機関における電子公文書管理等の実態のほか、令和7年4月に当館が公開した「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック」(以下「ガイドブック」という。)の活用状況等についても調査を行いました。
  今回、回答いただいた68機関の属性は図表1のとおりです。

図表1 回答機関の属性

  以下、本稿では、セクションAからDまでの質問項目ごとに、アンケートの結果を紹介します。

A.電子公文書に係る基本的事項について
  セクションAは、電子公文書に係る基本的事項について、公文書館等が設置されていない自治体も含めて、全機関を対象に質問し、68機関から回答がありました。まず、移管元機関における文書管理システム導入の有無を質問したところ、9割以上の機関が導入済み又は導入予定という結果となりました。

図表2 移管元機関における文書管理システム導入の有無

  文書管理システムを導入する予定があると回答した6機関に対しては、導入予定時期をうかがい、全ての機関から回答がありました。1年未満に導入する予定があると答えた機関がある一方で、導入予定はあるが時期が未定と回答した機関もありました。

図表3 文書管理システムの導入予定時期

  次に、文書管理システムを導入済みであると答えた機関に対して、システムの導入や運用における公文書館等による関与(協議・調整・情報共有等)の有無を質問しました。回答があった58機関のうち、6割以上の機関が何からの形で関与しているという結果になりました。

図表4 システムの導入や運用における公文書館等による関与(協議・調整・情報共有等)の有無(文書管理システムを導入済みの機関)

  また、文書管理システムを導入予定と答えた機関に対しても同様に公文書館等による関与の有無を質問したところ、回答があった6機関のうち、8割が何からの形で関与しているという結果となりました。

図表5 システムの導入や運用における公文書館等による関与(協議・調整・情報共有等)の有無(文書管理システムを導入予定の機関)

  セクションAの最後に、電子公文書等の管理や移管、保存、利用等の規則や方針、内規等を定めているか、その有無を質問したところ、定めている機関が約6割、定めていない機関が約4割という結果になりました。

図表6 電子公文書等の管理や移管、保存、利用等の規則や方針、内規等の有無

B 電子公文書等の移管・保存・利用(閲覧)について
  次にセクションBでは、電子公文書等の移管・保存・利用(閲覧)について質問しました。セクションBは、公文書館及び公文書館機能を有する機関のみ回答をいただきました。回答いただいた全機関のうち、59機関、約87%がセクションBの対象機関です。
  セクションBでは、まず電子公文書等の受入れ実績について質問しました。結果を見ると、受入れ実績がある、また予定はあると答えた機関を合わせると88%にのぼりました。この結果は、9割近くの機関が電子公文書等の受入れを今後進めていかなければならないということを示していると言えます。

図表7 電子公文書等の受入れ実績

  次に、前の質問で「電子公文書等の受入れ実績はないが、予定はある」と答えた機関を対象に、電子公文書等の受入れ予定時期をうかがいました。回答があった21機関のうち、7割近くが5年以内には受け入れ予定であり、1年未満の期間で受入れ予定と回答した機関も2割近くありました。

図表8 電子公文書等の受入れ時期

  続いて、電子公文書等の利用(閲覧)について、①利用に供している、又は供する準備はできている、②供する準備ができていない、という点を質問しました。電子公文書等を利用(閲覧)に供している、又は供する準備ができていると答えた機関は約4割弱でした。

図表9 電子公文書等を利用(閲覧)実績

  次に電子公文書等の受入れ実績があると答えた機関に、移管元機関に対して電子公文書等の受入れ等に関する説明や研修を実施しているか、その有無を質問しました。回答があった31機関において、実施している機関が4割、実施していない機関が6割という結果になりました。実施している説明や研修の中身としては、文書管理担当職員に対する研修や動画の視聴、メールによる案内などの回答が寄せられました。

図表10 移管元機関に対する電子公文書等の受入れ等に関する説明や研修実施の有無

C.「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック」(令和7年4月)の活用について

  セクションCは、ガイドブックに関する質問を中心とした内容であり、全機関に回答いただきました。まず、ガイドブック活用の有無を質問したところ、6割近くが活用している一方で、4割が活用していないという結果になりました。

図表11 ガイドブック活用の有無

  次に具体的なガイドブックの活用方法について、複数回答可でうかがいました。「(2)電子公文書の保存や利用に関する業務を検討する際の材料」や「(5)日々の文書作成及び管理業務における参考資料」としての活用等、業務に活用しているという回答がとりわけ多く、合わせて7割以上を占める結果となりました。

図表12 ガイドブックの活用方法

  一方、ガイドブックを活用していない機関に対しては、活用していない理由を複数回答可で聞きました。結果を見ますと、そもそもガイドブックの存在を知らなかったという機関が4割以上を占める結果になりました。

図表13 ガイドブックを活用していない理由

  次に、ガイドブックを活用していない機関に対して、活用の予定をうかがいました。回答いただいた28機関のうち、未定という機関が6割以上を占める結果となりました。一方、2割近くの機関からは、活用の機会があるとの回答をいただきました。

図表14 ガイドブックを活用する予定

  続いて、ガイドブックにおいて参考になった点を質問し、自由回答でいただきました。ここでは、いくつかの論点に分けて、いただいた回答の一部を紹介します。

(1)ガイドブックの構成・内容
  「標準的なフォーマットの表や解説がよくまとまっていて使いやすい」、「イラストや表が適宜使われていてわかりやすい」など、ガイドブックの構成や内容の分かりやすさを挙げていただきました。また、「本編と概要版があることで、確認したい内容(少しだけ確認したい、しっかり読んで理解したい、など)によって使い分けることが可能な点」や、「サマリーがあることで、実作業へのハードルを下げられるように感じた」との回答があり、用途によって、概要版や本編などを使い分けることができる点など、「ガイドブックの使いやすさ」を挙げていただいた機関もございました。

(2)電子公文書等の作成・保存・利用に関する基礎的な知識や考え方
  参考になった点として、電子公文書等の作成・保存・利用に関する基礎的な知識や考え方を知ることができる点や、ガイドブックにおいて必要な知識を分かりやすく解説している点を挙げていただいた機関もありました。

(3)電子公文書等の作成・保存・利用に関する留意点
  電子公文書等の作成・保存・利用に関する留意点が記載されている点を挙げていただいた機関もありました。例えば、「文書担当所属や文書担当者だけでなく、全ての職員が気を付けるべき事項(電子公文書の作成段階からファイル名や機種依存文字に留意すべき等)を記載している点」が参考になったとの回答をいただきました。

(4)具体的な業務への活用
  具体的な業務に活用できる点を挙げていただいた機関もありました。ここでは業務のフェーズごとに回答の一部を紹介します。
  第一に、電子公文書等の管理(作成・整理・保存・移管)のフェーズにおいては、以下の点が参考になったという声がありました。①ファイル名称の付け方や紙媒体の電子化など個別の事項について説明があった点、②将来の見読性を確保するため、標準的フォーマットの選択、文字コード・特殊文字への配慮、記録媒体の更新やバックアップなど、具体的な対策が書かれていた点、③「標準的フォーマット」として、音声・動画のフォーマットが記載されている点。
  第二に、保存のフェーズにおいては、「電子公文書の長期保存」の項目において、長期保存のために必要な業務の洗い出しができる点や、受入れ後の保存や作業の方法が明確になったとの回答がありました。
  第三に、利用のフェーズにおいては、特にマスキング処理について参考になったとの回答がありました。例えば、「マスキング処理について、図形貼り付けとマスキングの違い、など基礎的なところから説明されていてわかりやすかった」などの回答をいただきました。

  セクションCの最後には、ガイドブック全体の内容に関する感想をうかがい、自由回答でいただきました。ここでは、各機関からいただいた要望や課題を中心に紹介します。

(1)内容の充実(先進国の知見の導入、具体例の充実)
  内容の充実を望む回答として、先進国の知見や具体例を盛り込んだガイドブック作成の提言がありました。例えば、紙媒体から電子化する際の推奨設定や「メタデータ」について、どのような情報を残したり付加したりしていけばよいのかといった、実務上で使える具体例の充実が挙げられました。また、次の段階として、ISOなどの国際規格・国際標準についての対応と、日本における標準の策定などの要望をいただきました。

(2)最新の情報への更新
  電子公文書の技術的な面については日進月歩の部分もあるため、ガイドブックについても必要に応じて、最新の情報に更新し、提供されるとさらに活用の幅が広がるなどの要望をいただきました。

(3)ガイドブックの内容や構成
  「可逆性や文字コードなど、用語の解説は付されているが、日常業務でそうした用語に慣れていない職員や新採職員などには少し難しい箇所もあるように思った」「サマリーの各項目について、ガイドブック本編の何ページを見れば詳細が書いてあるか、といった記載もあればさらに使いやすいように思う」など、ガイドブックの内容や構成についても要望をいただきました。

(4)国立公文書館における活用・周知
  利便性の向上ため、当館のウェブサイト上で、ガイドブックを補完するためのチャットボットの仕組みを構築するなど、ガイドブックの活用・周知に関する要望もいただきました。

(5)各組織における運用の課題
  最後に、それぞれが所属する組織内でガイドブックをどのように活用・運用していくかという、いわば各組織側の課題を提示いただきました。例えば、「業務で実践していくには、やはり各組織のシステムに則ったマニュアルやガイドが必要になる」といった意見や、「ガイドブックをもとに、実態に沿った運用に落とし込むことが今後の課題」などの意見をいただきました。ほかにも、行政機関でどの程度実行可能なのか、国ではどのレベルまで徹底できる想定なのか、取り入れられる部分だけ取り入れていけばよいのかの判断が難しいといった意見や、組織内での研修素材としてそのまま活用することの難しさを感じたなどの意見が出ました。各組織でガイドブックをどう活用していくか問われているとも考えられます。

D その他
  最後にセクションDでは、全機関を対象に、電子公文書等について各組織が課題として考えていることを質問し、自由回答でいただきました。ここでは、(1)現用文書の管理、(2)移管・保存、(3)利用(閲覧)という3つのフェーズに基づき、課題を紹介します。

(1)移管元機関における現用文書の管理に係る課題
  とりわけ、現用文書の管理のフェーズで多く挙げられた課題は、文書作成・管理における運用・ルール作りや職員の意識向上といった、紙から電子への移行に伴うルールや意識をめぐるものでした。例えば、「電子決裁は未実施で、電子での保存、廃棄、活用といった部分は、明確なルールはなく、これからの課題となっている」などの回答が寄せられました。運用・ルールの構築と職員の意識向上はおそらく両輪の関係にあり、それぞれの組織の中で適切な管理体制を根付かせていく必要があると考えられます。

(2)電子公文書等の移管・保存に係る課題
  電子公文書等の移管時の課題として、文書管理システムから引き継ぐ(移管する)方法が確立していない点や、現行の文書管理システムが、公文書館へ電子公文書等を移管する仕様になっていないなど、体制面の課題が多く挙げられました。
  一方、保存に係る課題として、長期保存の課題や紙と電子の併用の問題を挙げる機関がとりわけ多かったです。長期保存の課題としては、PDF形式以外の「標準的フォーマット」で保存するとき、特定の機能(関数、外字、異体字、マクロ等)を使用していた場合、長期保存のリスクがある点、今後長期保存するにあたってどの媒体が適切かといった媒体の課題、利用システムが陳腐化した場合の情報の見読性及び保存性の確保、長期間の保存・利用のため媒体の更新やバックアップ、定期的な点検によってデータの劣化や再生不能を防ぐといった対策を講じる必要がある点、フォーマット変換していくための予算や人員の確保など、実に多様な論点から課題が提示されました。一方、紙と電子の併用の問題として、電子と紙に分離しながら長期にわたる保存が求められる複雑な仕組みである点、文書管理システム外で保存されている電子公文書等の管理・保存をどのように進めていくのかといった課題が寄せられました。

(3)電子公文書等の利用(閲覧)に係る課題
  電子公文書等の利用(閲覧)に係る課題としては、利用方法の確立や、利用制限の問題が挙げられました。印刷して提供するのか、それとも館内の端末で提供するのかといった電子公文書等の閲覧提供方法や個人情報のマスキング方法をどのように行っていくかなどの課題が多く寄せられました。

  以上が、当館が実施したアンケートの結果報告の概要になります。令和7年度のアーカイブズ研修Ⅱでは、アンケートを踏まえ、電子公文書等をめぐる全国の公文書館等の現状や課題を把握・共有し、解決の方向性を探ることを目的としました。本研修を通して、各機関が抱えている課題を共有する一助になれば幸いです。

  
  

[注]
[1]役職名は、令和8年3月末時点のもの。