リニューアルした国立公文書館デジタルアーカイブ

国立公文書館 業務課
電子情報第1係長 風間 吉之

1.はじめに

図1 国立公文書館デジタルアーカイブ

図1 国立公文書館デジタルアーカイブ

   国立公文書館(以下「館」という。)では、インターネットを通じて、館が所蔵する特定歴史公文書等(以下「館所蔵資料」という。)の目録情報の検索及び館所蔵資料の一部に対するデジタル画像の閲覧等を可能とした国立公文書館デジタルアーカイブを提供している。
   国立公文書館デジタルアーカイブは平成17年度から上記機能を提供してきたサービスであり、平成28年4月にリニューアルしたところである。
   リニューアルした同サービスでは、従来から提供している閲覧機能の改善や新たな機能としてモバイル端末へ対応する等、更なる利便性の向上を図っている。
   また、平成24年度に取りまとめた「国立公文書館デジタルアーカイブ等に係る基本構想」[1] 及び同構想等を踏まえて策定された「国立公文書館デジタルアーカイブ等システムに関する業務・システム最適化計画(以下「最適化計画」という。)」(平成26年3月13日国立公文書館業務・システム最適化PT会議決定)[2] に基づき、国立公文書館デジタルアーカイブ及び国立公文書館アジア歴史資料センター(以下「アジ歴」という。)の資料提供システムを統合することにより、システムの効率化を図るものとしている。
   本稿では、これまでの国立公文書館デジタルアーカイブ、リニューアルに係る背景等について触れ、今春のリニューアルにより新しくなった点を紹介する。

2.国立公文書館デジタルアーカイブ

   平成13年1月に決定された「e-Japan戦略」(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)[3]では情報通信技術の活用の推進が示され、翌14年6月に決定された「e-Japan重点計画2002」(IT戦略本部)[4]ではデジタルアーカイブ化を推進するよう必要な処置を講ずることが示された。これらを踏まえ、館では、館所蔵資料に関するデジタルアーカイブ化を推進するため、全館体制による調査検討や有識者による評価・検討委員会における検討結果等に基づき、デジタルアーカイブ・システムを構築し、平成17年に運用を開始した。
   上記システムによるサービスは国立公文書館デジタルアーカイブとして、館所蔵資料の目録情報及び一部の館所蔵資料を対象としたデジタル画像を提供している。平成27年度末には当該目録情報として約139万冊の目録情報を提供し、また、館所蔵資料の約13%に対するデジタル画像を提供するものとなっている。
   同サービスは、いつでも、どこでも、誰でも、自由に、そして無料で使えることを原則としており、また、館所蔵資料のデジタル画像についても同様に、特段の申請等手続きを必要とせず、ダウンロードして無料で使っていただくことが可能である。
   館には、公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)における「利用の促進」に係る規定に従った特定歴史公文書等の利用のための機関という側面がある。この点において、国立公文書館デジタルアーカイブは、来館が困難な方に向け、インターネット上で館所蔵資料に関する目録情報等を検索可能とする等、利用者の利便性向上を図った、館所蔵資料の利用を促進するためのサービスを提供しているといえる。

3.リニューアルまでの経緯

   平成24年度において、国立公文書館デジタルアーカイブとアジ歴資料提供システム(以下「両システム」という。)の連携・統合の可能性の検討及び「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)[5] を踏まえた利用請求等に係る諸手続きの電子化についての検討が課題とされ、館ではこれらに係る調査検討を行った。この調査検討では、次期におけるシステム統合の観点から、共有可能な機器を統合することとする、両システム間における部分統合方式について、システム上の課題及びコストを勘案しながら対応すべき等の見解がとりまとめられた。
   上記検討結果を踏まえ、平成25年度において、次期システム構築を目指した最適化計画が作成された。最適化計画は、各府省等及び独立行政法人等における情報システムの運用コスト等の削減等を図るために策定される、業務及び情報システムを最適なものとするための計画である。同年度に館で策定された計画では、次期システム構築に向け、両システムを統合することにより、システム全体経費の更なる削減及び運用・保守の簡素化・効率化を図ることを基本理念とした最適化を実施することとされた。
   また、上記最適化計画では、利便性の維持・向上を目的とした、デジタル情報資源提供の仕組みの強化等の取組も組み入れられた。
   以上に基づき、平成26年度に両システムの統合システムである「デジタルアーカイブ等システム」の要件定義を行い、翌27年度に同システムを設計・開発し、リニューアルしたシステムとして、28年4月に稼働開始したところである。

4.リニューアルした国立公文書館デジタルアーカイブ

   前章で記述の最適化計画では、国立公文書館デジタルアーカイブの次期システム構築(リニューアル)に際し、業務の効率化・合理化及びシステムの安全性・信頼性の確保を前提として、利便性の維持・向上及び経費削減を基本理念とすることとされた。
   また、同計画において、これらの基本理念に基づき、タブレット等モバイル端末への対応等様々な対応に取組むこととされた。
   館は上記計画に基づき国立公文書館デジタルアーカイブのリニューアルを実施した。今回のリニューアルで対応した主な点は以下のとおりである。

・タブレットやスマートフォン等モバイル端末からの利用に対応
   今回のリニューアルでは、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末からの利用が可能となった。従来のデジタルアーカイブは、平成21年度に設計・開発を行い、翌22年度に稼働を開始したシステムであるが、総務省による通信利用動向調査によると、同22年度の世帯保有率はタブレット、スマートフォンともに10%に満たない程度であった[6] 。しかし、今回リニューアルしたシステムの開発時(平成27年度)には、タブレットがおよそ33%、スマートフォンが72%まで増加している。
   また、上記モバイル端末の世帯保有率が増加し、一般に広く普及したことから、今回のリニューアルではこれらモバイル端末からの利用への対応として、端末に応じたWebレイアウトによる画面表示(マルチデバイスに対応したレスポンシブウェブデザイン[7] の導入)を実現した。

図2 ソーシャルメディアへの対応(上図下部)

図2 ソーシャルメディアへの対応(上図下部)

・ツイッター等ソーシャルメディアへの対応
   ソーシャルメディアへの対応として、新しいシステムでは、目録に係る詳細情報やデジタル画像へのアクセス情報等がツイッター、フェイスブック等ソーシャルメディアで容易に共有可能となるように取組んでいる。
   具体的には、当該アクセス情報として固定のURLを設け、目録の詳細情報等の表示画面で示すようにしたほか、これら表示画面にツイッターの「ツイッターボタン」やフェイスブックの「いいね!ボタン」等を配置することにより対応している。


図3 ビューア機能の変更

・デジタル画像のビューア機能の変更及び高精細画像のダウンロード機能の実装
   利用者からの画像の閲覧性や操作性等に関する要望が、利用者を対象としたアンケートにより把握されたことから、該当する機能の改善を図り、大判デジタル画像の表示に係るビューア機能を変更した。この機能では、一つの画像に対し、複数の解像度で、タイル状に分割した画像データを保持し、利用者が見たい部分を高速に配信するようにした。このことにより、当該画像の拡大・縮小や表示領域の移動を、よりスムーズに行うことができるようになった。
   また、デジタル画像のダウンロード機能を新たに設け、システム上で閲覧可能な画像だけではなく、高精細画像がある場合は、同画像のダウンロードも可能とした。ダウンロードはこれらの画像を対象とし、その全部又は一部を指定して実施可能としており、この点においても利便性の向上を図っている。

・主な資料のブラウジング機能
   重要文化財や特徴的な資料等主な資料の情報を整理し、トップページの「主な資料を見る」にカテゴリ別で分類、マウスクリックのみによる操作で当該資料のデジタル画像等へのアクセスを可能とした。また、各資料にはデジタル画像と合わせて解説を付けており、当該資料の理解を促すものとしている。これらデジタル画像と解説は一緒に印刷可能であるほか、本機能により、子どもを含む館所蔵資料にあまり馴染みのない一般の利用者にとってもより分かりやすく、より容易に利用可能となることを図ったものである。

5.おわりに

   今回のリニューアルは経費削減に努めながらも、利便性の維持・向上を図り、新たな機能等を実装した。なかでもモバイル端末への対応は、いつでも、どこでも、誰でも、自由に、そして無料で使えることを原則としている国立公文書館デジタルアーカイブにとって、この原則を推進するものとなっている。また、その他の機能等においても、使い勝手の面で昨今のWebサービスと親和性のあるものとしており、初めて利用する方にとっても、より直感的に操作できるよう配慮している。
   前回から数えて6年振りのリニューアルとなったが、初めて国立公文書館デジタルアーカイブを利用される方にとって、今後も利用していこうと思っていただけるようなシステムになっていることを願うものであることはもとより、従来から国立公文書館デジタルアーカイブを利用されている多くの方にお使いいただき、使いやすくなった等の評価を得られれば幸いである。

[1]http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/da_kihon1213.pdf (参照 2016-09-15)
[2]http://www.archives.go.jp/information/saitekika.html (参照 2016-09-15)
[3]http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/010122honbun.html (参照 2016-09-15)
[4]http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/020618honbun.html (参照 2016-09-15)
[5]http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/hozonriyou-gl.pdf (参照 2016-09-15)
   なお、確認時点での最終改正は平成27年12月24日一部改正となっている。
[6]「平成28年度 情報通信白書(総務省) 第5章第2節1(1)インターネットの利用状況」によるとタブレット型端末の世帯保有率は7.2%(2010年度)から33.3%(2015年度)へと増加している。また、スマートフォンについては9.7%(2010年度)であったものが、72.0%(2015年度)まで増加している。
[7]レスポンシブウェブデザイン(Responsive Web Design)はメディアクエリ(Media Queries)等の技術を用いて、複数のメディア(PC, タブレット等)に対応するウェブページを設計する手法である。なお、メディアクエリについては以下を参照されたい。
   Media Queries, W3C Candidate Recommendation, 23.4.2009
   https://www.w3.org/TR/2009/CR-css3-mediaqueries-20090423/ (参照 2016-09-29)