国立公文書館開館50周年を迎えて

国立公文書館
館長 鎌田 薫

  国立公文書館(以下「当館」という。)は、令和3年7月1日に開館50周年を迎えました。開館記念日には、井上信治国務大臣、上川陽子「世界に誇る国民本位の新たな国立公文書館を実現する議員連盟」会長及び国際公文書館会議(ICA)デービッド・フリッカー会長の御祝辞、福田康夫元内閣総理大臣の記念講演、小幡純子公文書管理委員会委員長、田中孝之読売新聞東京本社常務取締役、御厨貴東京大学名誉教授らをお迎えしてのパネルディスカッションが行われました[1]。これらを通じて、館員一同、半世紀にわたって当館を育んでくださった数多くの皆様の御尽力に思いを致すとともに、今後とも引き続き力強い歩みを続ける決意を新たにいたしております。
  開館以来50年の間に、当館に保存される文書は多様化し[2]、その量も大幅に増えました。これに応えるために、平成10年にはつくば分館が設けられ、平成11年に国立公文書館法が公布されて当館の責務が明確化され、平成13年の独立行政法人化により当館が独自に専門人材を採用できるようになりました。しかし、東京本館・つくば分館ともにその収蔵能力は限界に達しつつあり、国会前庭に新館が建設されることとなりました。現在は、当館の更なる発展を目指して、新館の展示・運営の在り方等に関する検討を進めています。
  また、平成13年には、アジア歴史資料センターが開設され、日本とアジア近隣諸国などとの関係に関わる近現代史資料をインターネット公開するようになり、これまでに約3,200万画像の資料を公開し、国内外から高く評価されています。これ以外に、当館としてもデジタルアーカイブやデジタル展示など、来館しなくても公文書に触れることのできる機会を増やしています。
  平成23年には、公文書管理法が施行され、公文書の作成から移管・廃棄、保存・利用に至るまでの全ての過程を適切に管理する体制が整備され、当館の責務と役割はますます重要なものとなりました。
  公文書管理制度が適正に運用されるためには、公務員全体の公文書管理に関する理解を深めることや、各行政機関において行政実務と公文書管理の双方について十分な知識・技能を有する専門人材を配置することが望まれます。当館では、これまでも、レコードスケジュールの設定等に係る専門的技術的助言、公務員向けの研修等を通じて公文書管理に関する意識の涵養と専門人材の育成に努めてまいりました。今後とも、研修の充実やアーキビスト認証の積極的な展開を当館の重要事業の1つと位置づけて人材育成機能を強化してまいります。
  当館では、開館50周年を記念して、「記録を守る、未来に活かす。」というキャッチコピーを策定しました。これは、国民共有の知的資源である特定歴史公文書等を、永久に保存することで、この国のすがたを国内外に示すとともに、それを、将来の世代が新しい時代を切り拓くための資料として活用していただく、という公文書管理法の理念を端的に表現したものと考えています。
  当館としては、この理念の実現のために、国内外の公文書館との連携やより一層の普及啓発活動の強化等を含む幅広い活動を積極的に展開するよう努めてまいりますので、今後ともますますの御支援・御協力を賜りますようお願い申し上げます。

〔注記〕
[1] https://www.archives.go.jp/news/20210730_50th.html
[2] 平成21年度以降司法文書も当館に移管されるようになった。