【巻頭エッセイ】周年行事に積極的に取り組む

国立公文書館長 
加藤 丈夫

   今年は、日本国憲法が施行されてから70年という記念の年にあたるので、国立公文書館ではそれに相応しい催しとして、5月3日の憲法記念日を含む1か月間「誕生 日本国憲法」という特別展を開催します。
   一昨年(2015年)は戦後70年ということで、全国各地で太平洋戦争の終結から今日までの歴史を振り返る多くのイベントが開催されましたが、このように歴史的に重要な出来事から何十年、何百年が経ったという節目の年に、改めてその事実関係を明らかにし、それが現在にどのような影響を及ぼしているかを多くの人たちに知ってもらうことは“公文書館ならでは”の大切な仕事だと思います。
   節目という意味では、来年(2018年)は明治150年になるので、いま国では「明治維新から現代まで近代国家としての日本の歩みを振り返り、それを通じてこれからの日本のあり方を考える」さまざまなイベントを検討中と聞いています。
   おそらく今後各地の公文書館にも国や県・市などを通じてこの記念行事への協力要請があると思いますが、私はこれを“公文書館の存在とその活動を広く知っていただくチャンス”と捉え、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
   それに関連する事柄として、日本は明治維新前後の数年間に諸外国と友好通商条約を結んでいるので、ここ数年間は毎年各国との条約締結150周年を迎えています。
   その一つにデンマークがあるのですが、今年は日本・デンマーク外交関係樹立150周年にあたり、両国でそれを記念するいくつかのイベントが計画されています。
   国立公文書館でも、今年10月にデンマークと日本の150年の交流の歴史を文書でたどる特別展を開催することにしているのですが、私も今年の1月にデンマークに出張し、コペンハーゲンで開催された両国の外交関係樹立150周年記念式典に出席すると共に、当地で国立の公文書館、博物館などを訪問し、この特別展に提供していただく資料の打合せなどを行ってきました。
   実は、150年前に締結された「日本・デンマーク修好通商航海条約」の日本側の原本は関東大震災で焼失してしまったのですが、デンマーク側が今年―記念年に際して、保存する原本をもとに精巧な複製を作成し日本に贈呈してくださったので、今回の展示会では両国が保有する条約の原本と複製が並んで出品される予定です。
   この他にも、資料の提供について両国の関係機関に協力いただく予定ですが、こうした展示が日本とデンマーク相互の理解を深めることに繋がればと願っています。
   これからも周年行事は毎年のように続きますが、これに対する積極的な取り組みは、正に私たちの“力の見せ所”と言えるかもしれません。

(終わり)