未来に向けて 50周年を迎える当館は、デジタル化の推進や新館建設など、その役割を遂行するため更に歩みを進めていきます。これからの当館に向けて、各界から期待の言葉をいただきました。

画像出典:2020年9月28日開催 公文書管理委員会(第83回)配布資料

老川祥一

株式会社読売新聞グループ本社代表取締役会長
国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議座長

 新しい公文書館の建設に関する調査検討会議のメンバーとして、初めて公文書館の所蔵文書類を見学し、驚いたことを思い出す。たとえば終戦の詔書である。清書された最終文書のはずなのに、書き直しや小さな文字の書き込みがたくさんある。終戦前夜の閣議の、慌ただしい動きが目に浮かぶようだった。原本だけが持つ迫力である。
 文書は、単に保存することだけに意味があるのではない。その原本を人びとにみてもらうことが、歴史をのちの世に語り継いでゆく大事な役割を果たすことにつながる。「保存、展示、閲覧」機能を基本コンセプトとする新しい公文書館が、「日本の記憶」の中心として、子供たちや多くの国民、また外国の方々にも学びの場になることを期待している。

坂東眞理子

昭和女子大学理事長 
元国立公文書館次長 

 私は1991年から93年まで国立公文書館の次長を務めました。総理府の人事異動の一環で具体的な仕事の内容については十分知らないままに着任しました。公文書館法が制定されてから日も浅く、まだ公務員の間にも公文書の保存や公文書館の重要性の理解が進んでいなかった時期で、中間書庫の検討が行われていました。在任中で印象深いのは国際公文書館会議東アジア地域支部創立総会に出席するため北京に出張し、档案館を見学したことです。日本の何倍もある大きな立派な建物で職員も多く、公文書や個人の履歴までしっかり保存され、正しく統治機構の一端を担う組織なのだと認識しました。その時期にアーキビストという専門職の重要性を知りましたが、今昭和女子大学ではその養成をする大学院のコースを準備しようとしています。

森本祥子

東京大学文書館准教授 
アーキビストの職務基準に関する検討会議構成員 

 このたび開館50周年を迎えられますこと、心よりお慶び申し上げます。その間の館の事業の展開、国内外でのプレゼンスの向上は、館に関わる方々の大変な尽力で積み重ねられてきたものと思います。改めて心から敬意を表します。
 日本のアーカイブズ界全体もこの間に大きく進展しましたが、依然として目の前に立ちはだかる難問は、専門職問題です。アーカイブズ保存には、専門知識は言うまでもなく、それをもとに全体を俯瞰して見る能力と意識が必要です。それを担うアーキビストが専門職として配置されることは、実は重要な情報や資料の保存を進めるうえでの一番の近道です。日本におけるアーキビスト専門職制度確立に率先して取り組んでいただくことを、これからの国立公文書館には何よりも期待しています。

新たな国立公文書館の建設

 世界に誇れる国⺠本位の施設の実現を⽬指し、新たな国立公文書館の建設が計画されています。国の三権が集中し、多くの国民にとって利用しやすい国会前庭に、地上3階地下4階の建物を建設し、敷地の北側に国立公文書館を、南側に憲政記念館を配置します。
 新館は、国のかたちや国家の記憶を伝え将来につなぐ「場」としての機能、民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源である歴史公文書等の保存・利用等に係る取組推進の拠点としての役割を担います。多くの国民が利用する展示・閲覧を中心とした総合的施設として、2028年度末の開館を予定しています。