20 伊勢湾台風

 昭和34年(1959)9月26日、紀伊半島の南端・潮岬しおのみさきに上陸した台風は、高潮により愛知県・三重県の伊勢湾沿岸を中心に大災害をもたらしました。死者・行方不明者約5千人に及ぶ伊勢湾台風は、共に3千人を超す犠牲者を出した、室戸台風、枕崎台風とともに昭和の三大台風に数えられています。
 伊勢湾台風では、およそ4メートル(名古屋港)の高さにも達する高潮が、強風による暴風波浪によって堤防を寸断して氾濫し、住宅などを破壊しました。伊勢湾とその湾奧部は、江戸時代以降の干拓地であり、水害に対して極めて脆弱な低湿地であったことが被害を拡大させた一因となりました。また、戦後の復興・発展の過程で不十分な防災対策のまま市街地化されたことや、防災対策が不備であることの自覚や警戒心の不足なども要因としてあげられます。さらに、戦後の住宅需要に応えるため貯木場に集積された木材が大量に市街地へ流入したこと、台風の来襲が夜間(26日午後8時頃名古屋市港区で浸水)であったこと、停電などにより避難情報が行きわたらなかったなど複合的な要素が重なり合って被害を拡大させたのでした。
 伊勢湾台風から約2年後、その目的を「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図る」と初めて防災の概念を明確にした災害対策基本法が制定されました。この法律により、防災に関して国・地方公共団体・公共機関・住民などの責任が明確化され、具体的な対策・措置について明記されるとともに、国、都道府県、市町村の各レベルに防災会議を設置し、それぞれ防災基本計画などを定めることとしました。
 また、伊勢湾台風から約1年後には防災意識啓発の目的から「防災の日」が定められました。9月1日を防災の日としたのは、同日が未曾有みぞうの大被害をもたらした関東大震災の発生日であることと、この頃が伊勢湾台風をはじめとした台風発生の多い、立春から210日目にあたることからでした。
 資料は、昭和36年11月15日に災害対策基本法が公布された際の文書と昭和36年の防災の日ポスターです。

関連リンク
愛知県名古屋市南区南陽通の避難状況
請求番号:平19 農水19581100

防災の日のポスター(昭和36年)
請求番号:昭55 科技00071100
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