ここから本文

36.修善寺温泉みやげ ―内務省警保局長決裁書類

警察庁から移管された「内務省警保局文書」には、明治年間から内務省が廃止された昭和22年(1947)までの記録が残されています。『特高月報』や『外事警察報』、地方長官警察部長会議書類などが含まれており、戦前の警察業務を跡付けることができる資料群です。平成8年(1996)の国会(参議院)での質疑が契機となって、保管されていた警察庁(警察大学校)から当館に移管されました。

警保局長決裁書類は、取締りに関する各府県との往復文書を含んでおり、その様相には時代が反映されています。展示資料は、静岡県から警保局に対する伺いです。修善寺温泉の土産物として販売されていたタオルの図柄が、「治安警察法」(明治33法律36)の適用を受けるかという照会に対し、取締りが必要との回答がなされました。治安警察法第16条には、公共の場で「安寧秩序ヲ紊シ若ハ風俗ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ警察官ニ於テ禁止ヲ命スルコトヲ得」と定められていました。

このタオル以外にも、「風俗壊乱」に該当する図柄をとりいれた様々な製品―私製郵便葉書、陶器、ナイフ、扇子、楊枝入れ、煙草入れ、袱紗、肩裏地、慰斗袋(のしぶくろ)など―が、明治末から昭和の初めにかけて各府県より報告されています(これらの現物は残っていません)。

また、取締りの対象となっていた「菊御紋章」のデザイン使用についても同様の照会が多数寄せられました。内務省は、明治33年(1900)に「菊御紋章取締訓令」(訓第823号)を出し、菊御紋章とこれに類似する図柄の使用を禁止しましたが、その後も取締りに該当するかどうかの線引きをめぐって、各府県からの伺いが相次いでいます。

風俗壊乱の虞ある「タオル」に関する件(静岡県)

※写真をクリックすると拡大画像が表示されます

本文ここまで


ページ上部へ


ここからメニュー

メニューここまで


ページここまで